第65回岐阜県学校歯科保健研究大会
 
研究テーマ
主体的に自己の健康管理や生活習慣を身に付ける子どもの育成
~自ら課題を追究・解決できる活動を通して~

岐阜市立長森東小学校

1 研究テーマ設定の理由
本校の歯に関わる指導は、給食後の歯みがきタイムや、養護教諭によるブラッシング指導等で行ってきた。令和2年度当初より、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、学校での歯みがきが中止となった。そのため、歯みがきに対する児童の意識が低下し、要観察歯・歯石や歯肉炎といった症状の児童が徐々に増加していった。この状態が続くことは、さらに歯の健康状態を悪化させ、将来の歯と体の健康を脅かす危険性も考えられる。将来にわたって自分の歯や体の健康を維持していくためには、よりよい生活習慣を身に付けようとする意欲を高めていかなければならない。
また、このような生活全般にわたる指導を効果的に行うためには、担任を中心に学校と家庭、学校歯科医等と連携を図っていく必要があると考える。

2 研究仮説
児童の一人一人の実態を把握し、指導内容を明確にした日常の指導や、児童自らが課題を粘り強く追究し、自己の変容に気付く授業を計画的に実施、蓄積してくことによって、自己の健康に関心をもち、よりよい行動を選択できる子を育成できると考える。

3 研究内容
上記の仮説を具現するために、学年の発達段階に応じて研究を進める。特に一単位授業については、以下に研究内容を示す。
研究内容① 「ゆたかに つかむ」
      主体的に学ぼうとする導入の工夫
研究内容② 「かしこく 探る・見付ける」
      主体的に課題を追究する場の設定
研究内容③ 「たくましく 活かす」
      自分の生活につなげる場の設定

4 実践
(1)研究内容①主体的に学ぼうとする導入の工夫
授業の導入では、課題を自分事として捉えて課題追究ができるように配慮をした。
1年生「何でもよくかんで食べよう」の実践では、事前に給食の好き嫌いアンケートをとった。児童は、アンケートの結果と給食の残菜量を結び付けることで、何でも好き嫌いなく食べなければならないことに気付いた。そして、バランスよく食べることは、健康な体づくりにつながることを学ぶことができた。
4年生「臼歯をみがこう」の実践では、児童の「自分は歯磨きができている。」という思いの中で、歯科検診の結果を提示した。児童の認識と事実にはズレがあることに気付くことで、「今のみがき方ではいけない。」という危機感をもち、自分自身の歯みがきの課題を知ることができた。
全ての児童が、歯と口の健康づくり事業で購入した「歯の模型」を使って、みがき方の追究活動を行った。一つずつ模型を手にすることで普段目にすることのできない奥歯の形や重なり方などを知り、みがきにくさを実感することができた。そして、自分の歯に適したみがき方を考えることができた。
 

(2)研究内容②主体的に課題を追究する場の設定
児童が主体となって追究活動に取り組む姿を目指し、「指導者が教え証明する」学習展開から、「児童によるかしこく探り見付ける」ことを重視した学習展開を心掛けた。。
3年生「前歯をみがこう」の実践では、一人一人が「歯の模型」を使用し、みがきにくい前歯の裏側をきれいにみがくには、歯ブラシのどの部分を使ってどのように動かすとよいのかを、「色分け歯ブラシ」を用いて追究した。

5年生「歯肉炎を予防しよう」の実践では、1日3回歯みがきを行っているA児とB児の生活の様子を比較することで、歯みがき以外にも、歯の健康を守るためには必要な条件があることに気付いた。さらに、健康的な生活習慣を身に付けることで、免疫力が高まり、体全体の健康増進につながるという考えを深めることができた。
特別支援学級「1本1本ていねいにみがこう」の実践では、カラーテストの結果から、みがきにくい歯がどこなのかを知り、一人一人に応じた課題を提示して追究した。タブレット端末に記録した「カラーテスト後の歯の様子」を見ながら、歯の模型を使って、自分に合った歯ブラシの動かし方を見付けることができた。
 

(3)研究内容③自分の生活につなげる場の設定
全ての学級で、授業の終末には、「本時の学びを通して、これから自分はどのようなことを頑張っていくのか。」等、今後の取組を明確にする場を設定した。個にあっためあてを決めて家庭でも取り組めるようにすることで、授業の学びを本時のみで終わらせるのではなく、持続的・継続的に意識付けさせることができた。

2年生「歯や口のけがを防ぐにはどうすればよいだろう」の実践では、学校生活において、廊下を走ったり、階段から飛び降りたりする姿が見られるが、その行動は頭をぶつけたり、衝撃で歯が折れたりという大きなけがにつながる危険性に気付くことができた。そこで、大切な歯を失うような大きなけがを防ぐにはどういう行動をすればよいのか、個の課題を設定し、取組カードを使用して継続して取り組んだ。

6年生「骨や歯を丈夫にする食事を考えよう」の実践では、健康な体をつくる成長期には、骨量を増やすカルシウムを十分に摂取する必要があることに気付き、「さしかえる・くわえる・つけたす」をキーワードに、自分の朝食を見直した。また、ゲストティーチャーとして授業に参加した栄養教諭から、カルシウムを効率よく摂り入れるための食材や調理の仕方についてアドバイスを受け、朝食の献立を作成することができた。
個に応じためあてを設定し、今後の学校生活や家庭でも実践する方法を考えさせることで、授業の学びを本時のみで終わらせるのではなく、持続的・継続的に意識付けることができた。
 

5 成果と課題
【成果】
○事前のアンケートで児童の実態を把握し、認識とのズレのある事実を提示することで、課題解決の必然性のある課題意識及び追究意欲を高めることができた。
○個々のめあてを設定したり、取組表を作成したりすることで、歯と口の健康づくりへの意欲を高めることができた。
○分かりやすい資料を準備すること等で、歯と口の健康を守る方法は、歯みがきだけではなく、普段の生活習慣が大事であることが分かり児童の視野を広げることができた。

【課題及び課題解決の方途】
●歯と口の健康への関心を高めるために、朝の会や給食の時間等、日ごろから歯と口に関する話題を増やしていき、児童が自ら見付けた歯と口の健康を守る活動の定着を図っていく必要がある。
●まだまだ、学校で歯みがき活動に関わる指導が思うように実施できない今、家庭での歯みがきが重要となる。そのために、さらなる家庭や地域への啓発方法を考え実践していく必要がある。